創立!?三ツ星生徒会 1

創立!? 三ツ星生徒会1 そのとき恋3がはじまった (ファミ通文庫)

創立!? 三ツ星生徒会1 そのとき恋3がはじまった (ファミ通文庫)

  • 今回の名場面

「人ならぬ我には、そういう感傷をどうしても察してやれん。判ってやれん。だから」
────だから、恵の協力が必要なんじゃ。
(254頁)
普段がアレな水穂の口から出た言葉だけに尚更感慨深い一言・



諸々あって星ノ一高校(ホシ一)校内の池で溺死しかけた僕─向坂恵
辛くも一命を取り留めるも、命の恩人となった土地神水穂様(どう見ても金魚)に見返りとして協力を強いられる。
曰く昨今の少子化で生徒数が減少する影響で活力が失われ、土地を守護する力も衰える一方とのこと。
そこで、市内にある三校をまとめることで生徒数を増やし、活気があり“平和な学び舎”を取り戻す事に。
しかし人集まらば争うのが世の常。
そうして出来た新設校は星岡高(男子校)と星村女子高(女子校)がいがみ合う場となる。
これじゃあ数は増えても平和なんて程遠いよ・・・。



というわけで、平々凡々取り柄なしで消極的性格の主人公が土地神様の地域振興(=学校敷地内)を手伝わされる形で始まる本作。
前提となる三校統合までは神の見えざる手もはたらきトントン拍子で進みますが、その先は恵の仕事すなわち生徒会運営。
とはいえ押し付けられて生徒会長になった恵とは違い、自ら進んで全校生徒を先導する立場に就いた才色兼備の両雄なるホシ高とホシ女の生徒会長は、由緒ある己が母校への誇りもあって顔を合わせば喧嘩となる始末。
三校の生徒会役員を一同に集めた暫定生徒会もその調子ではろくに機能せず・・・と困難が立ちはだかります。
そしてこれを時に水穂の力を借り、また土地神の秘密を共有する事になったヒロインと協力し、四苦八苦しながら解決しようとするのが序章となるこの1巻。


そういったこともあり、1巻はその大半を諍う両校の融和させバラバラだった学校の雰囲気をひとつにする過程を描いています。
青春ストーリーの色合いが強いかも知れません。
が、そのまま終わってはサブタイ及び背表紙・帯の文言に偽りアリ。
ラストわずか10ページほどのエピローグ中ではありますが、そこでサブタイ通りのラブコメ展開への花火が高々と打ち上げられます。
良い意味でひどいオチです。
思わず笑ってしまいました。


尚、エピローグに限らずともコメディ色のしない甘酸っぱくてほろ苦い感じ恋模様は本編中から兆しがあります。
そっちが比較的シリアスかつ神妙なムードなのに対し、最後に打たれた布石は完全に笑い話の塩梅。
2巻はこのコントラストが映えそうで楽しみです(春頃出版予定)。
兎に角も、気楽に楽しく読める一作。
主人公ばかりが良い思いをしてモテモテといった図式とは異なりますので、同じラブコメでもそういったものが食傷気味の人にもオススメです。


余談。
前作『暴風ガールズファイト』のタイトルが判りにくいと各方面からお叱りを受けたから今回はストレートで具体的にしたとのこと。
個人的にはむしろこういうタイトルの方がとっつきにくいしセンスないなぁと思うんですが*1、そういう趣向は僕だけなんすかね。
業界的にはそうでなくとも、比較的読者の立場としてはシンプルなものか(キノの旅とか)、逆にひねってて内容の想像つかないもの(ALL YOU NEED IS KILLとか)の方が良いと思うんですが・・・。

*1:実際10月時点の仮題で興味を惹かれたものの正式なタイトル見て「え、ナニコレ」と興味を削がれて発売後すぐに買うのを敬遠し、しばらく評判を見守ったほど