彼女は戦争妖精 1

彼女は戦争妖精 1 (ファミ通文庫)

彼女は戦争妖精 1 (ファミ通文庫)

何年も前に海外に行ったきり連絡もよこさないクソ親父。
今頃はもうどこかでくたばってるのかも知れない。
しかしある時、運送会社の手違いで7年間も放置されていたという親父からの大きな荷物が届く。
どうせいつもの下らない品々が満載なのだろうと思いつつ開けた箱の中にあったのは少女の死体!?
いや、綺麗なビスクドール・・・でもない!
こ、こいつ息してやがる・・・。



※10年2月23日追記

ここ数ヶ月、戦争妖精を検索して訪問しにきて下さる方がかなり増えてきています。
光栄なことなのですが、検索で上位に来るリンクが1巻の感想。
必然的に1巻の感想ばかりが閲覧されるわけですが、いまこうして振り返ってみると大分お粗末な紹介となっており、はっきり言って我ながら作品の魅力や本質をお伝えできていないな、と思う次第。
まだしもこの1巻の3日後に書いた2巻の感想の方が幾分マシなので、よろしければそちらも見て頂けると幸いです。
まあ、理想を言えば3・4巻とすべて目を通してもらえると良いのですが・・・。
2巻へ飛ぶ



つい先日2巻が出た本作。
2巻が出るまで評判待ちをしてみて、目だった不評がなければ読んでみようと1巻発売当初から考えていた一作をようやく読了。
先に結論から。
これは面白い、すぐに2巻も読もう。


というわけで、冒頭の件のように始まる現代劇。
人形かと思ったのは実は妖精を自称する少女で、飛び切り綺麗な顔立ちをした10歳児。
しかし話を聞いてみると名前ぐらいしか分からないというし、どう考えても精神年齢が5歳や6歳のそれでしかない。
警察に届け出ようにも事情の把握も説明もできないコイツを連れて行ったらあらぬ嫌疑が自分にかかって人生が終わりそう。
唯一の身内である叔父とは連絡も取れず、いつ海外から戻ってくるか知れない。
止む無く自分のところで匿うことになるのだが・・・。


というように冒頭の後に続きまして、その後主人公──宮本伊織は唐突に命を狙われます。
そうして徐々に明らかになる彼女の正体と自身に降りかかった災難の重大さ。
その作品を知っている事が前提になるのでたとえとしては適切ではないのですが、まあ言ってみれば『ローゼンメイデン』みたいな展開が始まります。
少女は戦争妖精。
戦争妖精(ウォーライク)の宿主となった者は、サバイバルを勝ち抜き“楽園”へ還る事を目的とするウォーライク同士の殺し合いに付き合わされる、と。
その他、戦闘は基本的に外界への影響や干渉が及ばない結界のようなものの中で行われたり、敗れたものはウォーライクに関わった間の記憶を失くした上で整合性の取れるよう別の記憶が上書きされるなど、『灼眼のシャナ』の封絶やトーチなどに代表される都合の良い設定あり。
まあ、この辺は物語を円滑に進める上である種仕方ないものでもあり、あまり気にはならないです。


この作品はそういったありふれた設定や世界観などよりもキャラクターの魅力が強い。
一にもニにも伊織が出会ったウォーライク──クリスタベルが可愛いの何の。
甘えん坊で腹減りさんで常識に欠けてて素っ頓狂で裏表がない。
何この小動物、保護したい!と思わせるような愛くるしさ。
先のたとえと照らし合わせるならローゼンの雛苺に近いものがあるかも知れません。
(個人的にはあちらよりクリスの方が好きですが)
兎に角も、ぶっきらぼうで一見して冷たい男のような伊織があれやこれやとクリスに振り回され、文句を言いつつも保護者のように面倒を見るハメになる光景が和やかで面白い。
バトル・アクション関係に関してはこれといって冴えたものはありませんが、くどくなくさらりと読めて流れが把握しやすい表現で書かれているのが良いですね。
主人公ペア以外のもう一組もそれぞれの個性とコンビとしての色が魅力的ですし、設定や物語に目新しさはなくても十分に面白い作品だと思います。