彼女は戦争妖精 2

彼女は戦争妖精2 (ファミ通文庫)

彼女は戦争妖精2 (ファミ通文庫)

  • 今回の名場面

「・・・・・・すべて話してくれたのは、わたしを、信じてくれているから」
「それで充分・・・・・・知音は、ひとりいれば、いい」
(207頁)


薬子が言っていた「校内にもう一人居る」というロード。
ある日、そのロードが伊織にコンタクトを取ってきた。
伊織がどのような人物で“どちらの人間なのか”自分の目で確かめておきたかった、と。
そしてこうも告げた・・・。
「早瀬先生を信用するな」
浮かび上がる疑念、次々に現れる強大なロード。
物語は急速に展開し始める。



てなわけで早速の2巻。
1巻はキャラクター力に頼むところが強く、ストーリーは比較的凡庸だった本作。
しかしそれもすべては始まりの1巻ゆえの手探りだったと言わんばかりに今回はストーリーで魅せてくれます。
不意に楔打たれる薬子への信頼。
昨日今日あったばかりの人間と命まで救われている薬子のどちらを信用するか。
答えは明白なようでいて、その実伊織にも薬子に対してはどこか思うところがあり・・・。
というわけです。
1巻にて良き先達、頼もしき味方として颯爽と登場したばかりの人物に早くもクエスチョンマークを打つとは・・・良いですねー。


一方で、伊織にそうアドバイスをした人物──大路常葉も自分の内に渦巻く矛盾との葛藤に悩まされることに。
高潔を絵に描いたような人柄であり、校内でも知らぬ人は居ないほどの人気を誇る彼女ですが、恋すればやはり人の子。
あることをきっかけに長く抱えてきた想いが発露し、あの人との・・・そして自分との決着をつけなければならなくなります。
常葉の機微を描いたこの一連のエピソードは読み応えがあります。


また、前回思わせぶりに登場した老紳士の関係者として幾人もの人物が新たに登場。
様々なキーワードと憶測を呼ぶ構図を見せつつも、素性や目的などは一切不明。
謎が多くばら撒かれ、先の展開への期待が高まります。
但し、初期のうちに全体の構図や敵対する組織などを提示し明確化するセオリー的な流れには反していますので、伏線が多く分からないことだらけのまま進行する物語が好みでない人には受け付けられ難いかも。
個人的には最初から全体像が明らかなよりも徐々に紐解けていく作品が好きなのでとても面白いのですが。


ちなみに屠った相手の数=そのウォーライクの強さであるにも関わらず、1巻から引き続き今回も伊織とクリスは上位者食いを果たします。
どうもクリスは特別なウォーライクらしく・・・。
ありがちありがち。都合が良い。
まあ、そうでもないと即敗北で死亡となるので仕方ないっちゃ仕方ないんですけれど。


そして、これはキャラクター力の方の話ですが、クリスの陽気さとは別に伊織の冷徹さがじわじわ効いてきます。
割とスバスバと物を言い、自分にも他人にも厳しいタイプ。
優柔不断であったり甘さと優しさの区別がついていないような中性的な男の子主人公の多いラノベの中では異彩の部類に入ります。
かなり好きです。


それからそれから。
2巻にもなって今更ですが、タイトルの「彼女は〜」というのは「She is〜」のことであり、サイカノに代表されるような俺の彼女(=交際相手)が戦争妖精になっちゃった、という話ではありません。
僕も最初はてっきりそっちの方だと勘違いしていたので「またそういう作品か・・・」などと思ったりしました。