晴れた空にくじら 2

奉天を飛び出し、ロシア軍機の追撃から逃れ本土へと帰還した峰越。
多少のトラブルはあったものの日本軍に保護され事なきを得たが、そのまま済し崩し的に軍列に名を連ねることに・・・。
しかし雪平は生来の性格からこれを特に不服とせず何となく任務に就き、クニは虎視眈々と復讐の相手と再会すべく軍鯱に乗るのだった。



というわけで、浮珠という面白設定を取り入れた飛行船のような軍船に乗る青年たちの物語第2巻。
毎日顔を合わせ共に浮船に乗ることで徐々に打ち解けてきた観のあるクニ。
雪平に対する態度も軟化してきた節があり、稀に笑顔を見せるようにもなりました。
しかしその胸の内には堅く敵討ちの念を抱いたまま。
そしてかねてよりクニの言う“仲間”の敵とは即ち、父親の敵ではないかと察していた雪平は遂にその事をクニに問うのですが・・・。


雪平に好意があるわけではないのでしょうが、当初に比べると大分言動が変化してきたクニが可愛い。
深く考えず思ったことが口に出る雪平も雪平ならそれにカッとなって手を上げたりしてしまうクニもクニ。
その事に本人も自覚と反省があるのか、やってしまった後に時折見せるしおらしい仕草が良いなぁ。


一方ストーリーの方では民間機も軍機として登用するほどである日本軍は雪平が漠然と抱いていた想像以上に逼迫した状況にあり、戦況はかなり芳しくない模様。
旗艦も失い、軍鯨も足りなければ人手も足りない有様。
それにも拘らず立案実行される作戦は確固たる戦力である旗艦あってのものであるなど、その迷走ぶりが末端に居ても察せられるほど。
峰越にも新キャラとして一人配属されるのですが、これが?と思わせるような小柄な女性というか少女というかであり…(一応雪平より年上)。
しかしそんな状況に疑問を呈するでもなくぼんやりと日課をこなすべく空に発つ雪平は、一度に三機ものロシアの襲撃鯱と相対することとなります。


と、中盤までは穏やかで暢気な調子が一変、後半は前回に勝るとも劣らない危機に直面。
浮珠という独特の設定もそれまでは影を潜めており結局独創性が見られたのは1巻だけだったのかと思われましたが、今回も終盤できちんと活かされていました。
クニも敵討ちに関して何やら自身もこれまで気づかなかった本当の気持ちを自覚したらしく、今後その辺りがどう展開されていくのか。
まだ続けて読む気にさせられる一作。