狼と香辛料 10
- 作者: 支倉凍砂,文倉十
- 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
- 発売日: 2009/02/01
- メディア: 文庫
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情報にある修道院を目指し海を渡るが、着いた土地は権威を守らんとする修道院と財政に逼迫する国政、そしてそこから利益を得んとする者の思惑が絡み合う窮状にあり・・・。
最近もっぱら行商そっちのけでホロのために駆けずり回るロレンス奮戦記、大台の10巻目(本としては11冊目)。
構築されたからくりが読み物として面白かったケルーベ編から明けての最新刊です。
えー、まず始めに断っておくべきことがあります。
普段ネタバレを殊更に控えていますが、今回はあまり自重していません。
というのも、今回はこれまでとは違った様相を呈している面があるから。
しかしただ「いつもと違う」とだけ言っても伝わるわけがありませんので、そのためにはネタバレ覚悟である程度説明する必要がある次第。
ご承知置きの上、以下をご覧ください。
では、あとからあとから小出しにされてはたまったもんじゃないでしょうから手っ取り早く済ませてしまいましょう。
今回違う点は感じた限りでは次の通り。
- まずロレンスと利害の対立する人物がいない ゲストの登場人物は一致協力し共に戦う人のみ
- 銭勘定が関係してこず、ロレンスが儲ける儲けないの事態とならない
- テーブルに着くまでが遅く、着いてからの展開が早く分量が少ない
以上です。
なんのこっちゃ?と思われるかも知れないので大雑把に補足すると、ゼーレンから始まりエーブときて9巻のレイノルズを最後に、ノーラを除きこれまで最初にロレンスに親しげに接してきた人はすべからく敵対する関係、早い話が敵になりましたが、今回はそれがない。
これまでがそうだったので今回のある人も好青年にも関わらずそうなる懸念を抱き終始疑ってかかって読んでいたのですが、中盤で杞憂と分かりほっとしました。
また、ロレンスが取り掛かることになる案件も金貨を稼げる稼げないではなく、単純にもう狼の骨探しのためだけにやっています。
行商そっちのけ、と冒頭に書いたのはそのせいでもあります。
前回も大分そういった傾向がありましたが、ここまでくると商人としてはそろそろ失格。
ホロの伴侶としては益々上々といった塩梅。
そしてその案件に入るまでが長く、いざ事態が進み始めると拍子抜けするほどあっという間です。
この10巻はかなり分厚いのですが、水面下はともかくとして物事が表面化して進行し始めるのは残りも1/3を切ったかという頃から。
とまあ、そういったこともあり今回はホロのための話だったといって差し支えない。
前回はロレンスが一人大立ち回りを演じ、金銭の絡む商人同士の白熱したせめぎ合いを描いていましたが、この話ではそういったせせこましい枠を飛び越え、どちらかといえば感傷的な物語になっています。
それだけに手に汗握る商取引の攻防は影を潜めがちですが、前回がそちらに傾倒していただけにバランスとして良いかと思います。
いずれにしても読み応えは相変わらないものがありますので、満足。
ホロの故郷ヨイツに関してもついに過去のことではなく「つい最近見聞きした」という者からの情報がもたらされ、次回に向けて大きな種が蒔かれました。
さて、どんな情報だったのか・・・気になって仕方がないです。
余談。
かじかんだ手を合わせてハァ〜ってしてる女の子ってすごくイイよね!
いや、表紙の話なんですけどね。
発売前に10巻のデザインを見た時は「ああ、これはやばいな・・・」と思ったものです。