ベン・トー 2

ベン・トー 2 ザンギ弁当295円 (スーパーダッシュ文庫)

ベン・トー 2 ザンギ弁当295円 (スーパーダッシュ文庫)

ギャグなんだかシリアスなんだかわからない・・・いや、どっちもなんだろうけどそれにしても渾然一体。
真面目な顔して半額弁当買うために殴る蹴るする様子をシリアスに描写されたら読者はどんなリアクションをすればいいのか。
滑稽な構図を笑うべきなのか、たかが半額弁当如きにそこまで真剣になる彼らを讃えるべきなのか。
読者に対し前代未聞の問いかけを投げつける異色作第2巻。


とまあ大仰なことを言ってみましたが、相変わらずそんな調子の2巻でした。
基本的にはバカなノリでギャグやってるけど芯に一本通ってる。
そんな感じ。
でもやっぱりギャグ成分が凄いすごい。
毎回一部が編集さんの厳命によって削除されるという実名を臆せず使ったパロディの数々も強烈。
この本だけは周囲の目がある公然の場では読めない。
漫画ならいざ知らず、小説でたとえじゃなく本当に声を上げて笑ってしまうことがあるのはこれくらいのもんです。


さて、2巻は半額弁当及び“最強の狼”の称号を巡って組織ぐるみの陰謀が幕を開けます。
川向こうの町の狼たちが事前に計画を練り調査を重ね人員を配置し、「弁当を獲るのが一番巧い人」の称号を得るために洋たちの町のスーパーマーケットに総攻撃をしかけてきます。
文字にするとひどく馬鹿馬鹿しいですが、やってる彼らはマジです。
脳内でヤクザ同士の抗争とかに置き換えると結構ヤバいことになる。
そんな状況。


ちなみに何人かの新キャラも登場します(洋にライバルもできます)。
うち一人はレギュラー化が確実な洋の従姉─著莪あやめ
1巻にて本文中にちらりとだけ名前の出た彼女が狼の一人として登場。
1巻での扱いが本当に文章の中にポッと出た個人名程度だったので意外でしたが、その人となりも想像の範疇を大きく逸脱してます。
生まれた時からの長い付き合いとあり、いわゆる幼馴染キャラである以上美人なのは良くあることとしてもそれ以外がなかなか常軌を逸してる。


まず洋に対する遠慮が一切ないです。
「二人ともそれ相応に大きくなってもう昔のように接することはできない」
とかありがちなそれが皆無。
とある事情から洋がイチモツを膨らませてしまってそれを隠そうとする場面があったのですが、その事に気づいた彼女が取った行動は「何おっ立ててんだよ、とにやにや笑いと共にソレを鷲づかみにする」という暴挙。
どんな幼馴染キャラだよ・・・前代未聞だよ。
幼馴染というよりまさに腐れ縁の関係という言葉が相応しいフランクさ。


また、双子のように育ってきた洋のことを憎からず思っているのは確かなんですが、素直になれず照れ隠しをするといったツンデレっぽさもなければベタベタするでもなく、本当に気心知れた良き友人みたいな調子。
竹を割ったような性格と相まって好感の持てる人物ですね。
ちなみにそれだけ親しいにも関わらず洋のことを「佐藤」と苗字で呼びます。
これも幼馴染キャラとしては過去例がないような珍しさ。


尚、今回はそんな彼女と川向こうの人及び魔導士こと金城がストーリーの中心となっています。
洋はまがりなりにも主人公なので何とか終盤に見せ場がありますが、先輩がほとんど背景・・・。
下手に強い人として確立されてしまっている分、敗北や失敗に膝を折りそこから立ち上がって成長する展開が描けないので出番を取りにくくなってる感じ。
過去、金城との間に何かあったようなのでいずれその辺りに突っ込んだ過去の掘り下げ話があるはずですからその時こそ中心に来れるのかな。