パララバ−Parallel lovrs−

パララバ―Parallel lovers (電撃文庫)

パララバ―Parallel lovers (電撃文庫)

第15回電撃小説大賞「金賞」受賞作。
もう受賞作品ってだけで買うのはやめよう。
他人の評価が出るまで様子を見てそれからにしよう。
そんな浅ましい考えに基づき、評判が良かったから買ってきた一作。
そして読み終わっていま一言。
せつねぇぇぇぇ!これはいい、全力でオススメ。


というわけで、まったくの新人さんの作品。
大好きだった彼が死んでしまった・・・。
しかし通夜の晩、一本の電話が届く。
電話の主は死んだはずの彼。
そして声は告げる・・・死んだのはお前の方ではないのか、と。
彼が死んだ私の世界。
私が死んだ彼の世界。
携帯電話だけでつながった平行する二つの世界。
そこにどんな意味が?二人の運命は?
(紹介文より一部引用)


ファンタジックな恋愛物かと思っていましたが、そうではなくミステリー要素バリバリの綿密に練られた作品。
いわゆるパラレルワールドを題材としていますが、完成度はかなりのものです。
パラレルはタイムリープと並び題材としてはこれ以上ないほどの素材である反面、構築の難易度も最難関。
しかしこの作品はその素材を殺さず、また素材に殺されることもなくきちんと昇華させている。
「繋がっているけれど絶対に手の届くことはない」
このもどかしさが読み手をも苦しめるほどに切ない。
ほんと切ない・・・最後は泣いてもいいと思う。
シリーズ化して続くことはないけれどひとつの作品として完成されているまさに応募作、受賞作にふさわしい一作です。
買って読むべき。


また、ストーリーとは別に配役の妙も感じられました。
単に個人的な好みかも知れませんが、「風変わりでちょっと謎めいているけど頼りになる先輩」が唯一すべての事情を知る者として協力者となります。
ありきたりかも知れませんが、これが良い。
必須といってもいい。
私と彼だけではこの作品は成り立たなかった、ここまで魅力的にはならなかった、そう思うほどに。


完結作であり、また題材的にも次も同じ類のものを出すのが難しいと思われますが、別の題材で次はどんな作品を書いてくれるのか。
非常に楽しみです。