彼女は戦争妖精 3

彼女は戦争妖精 3 (ファミ通文庫)

彼女は戦争妖精 3 (ファミ通文庫)

色々な謎が散らされた前回。
薬子ですら安易に信用してはならない、という面白い石も投げ込まれました。
が、今回はそこからの発展は特になく、新キャラの登場が主。


というわけで早くもと言って良いでしょうか、3巻目です。
冒頭にも書きましたが、薬子の件に関してはまたひとつ疑問が深まるに留まり、大きな進展はなし。
明らかに噛ませ犬と思われた*1健二ペアに関しても今回は脇に置かれ、進展なし(わずかながら、登場はあり)。
常葉も出番はありますが、やはりあまり目立った行動はなし。


今回は彼ら既存の登場人物ではなく、伊織サイドに一人、敵対者に一組の新キャラがメインです。
中でもある人物から伊織の元に向うよう言われ、伊織家に来た(同居人がまた増えました)ルテティアの出番はとても多いです。
ほぼ彼女と伊織のやり取りでストーリーは進行していきます。


しかしこのルテティア、伊織とかんっぺきに反りが合わない人物なのですが、彩りとしては面白いです。
クリスが親に甘える子供のように伊織にベタベタなので、揺らぐ事のないツンっぷりが映えています。
まあ、伊織からしてこの種の主人公にしては珍しく鈍感朴念仁でも優しい柔和な少年でもなく、割と冷血漢でツンケンしているので、二人がぶつかりあってばかりの伊織家の家庭環境はあまり宜しくなくなるわけですが・・・。
そして丸々1冊かけてそういった状況から関係が少し改善し、打ち解けられたかな?となるまでを描く展開になっています。


ちなみにキャラ付けとしては相当の美少女。
しかしそれが故に、世の男は自分にかしづくもの=男はこき使うものという考えが根底にあるかなりのわがまま娘。
が、偉そうな割に大して頭が回らず、口では伊織に歯が立たないというすごいんだがすごくないんだが人間味のある人物です。


尚、もう一方の新キャラはクリスか伊織が持っている(=父親から知らず託されている)あるモノを探しに来たロードとウォーライクのペア。
そしてその探し物がまた謎ワードのひとつになる、と。
モノは当初「書」とだけ記述され、そのまま延々とストーリーが進行。
一応「妖精の書」という名称まではこの巻で出ましたが、どういうものでどんなはたらきをするのかなどは一切不明のまま。
ウォーライクとは何で、楽園(エリジウム)とは何なのか、そこに至ることにどういった意味があるのか。
そういった諸々のことも3巻となった今回でも未だ明らかにならず。
昨今の設定系ファンタジーによく見られる傾向ですが、この作品もまた、謎は謎のまま解消されることはなく、新たに謎だけが増えていくタイプのようです。
そういった趣向の作品が性に合わない方にはちょっと薦められないですね。
全体として面白い作品なので多くの人に読んでもらいたい所ではありますが・・・。


また、上述のロードもしぶとく生き残るので、増える一方でキャラが減らないのが若干心配でもあります。


さて、次巻は続きの話となるか、ちょうど1冊分に達しつつある短編を収めた短編集となるか、いまのところ未定だそうです。
短編は公式HP上で読めるから(バックナンバーは半年間だけですが)続編をどんどん出して欲しいかなぁ。

*1:実際著者はそのつもりで、薬子にやられて消える予定だったそうな。それを担当氏がもったいないよ、とおっしゃったので存命することになったそうです(笑)