とある飛空士への恋歌 2

とある飛空士への恋歌 2 (ガガガ文庫)

とある飛空士への恋歌 2 (ガガガ文庫)

一作目の人気を背にシリーズ化となった飛空士物語第二作、第2巻。
不穏当な滑り出しから始まった1巻から一転、今回は暢気で穏やかな趣き。
次なる急展開へ向けて一時のインターバルか。


さて、2巻です。
渋々の呈でイスラに来てすぐに素敵な女の子に出会い心浮かれるカルエル。
その彼女こそ、仇敵ニナ・ヴィエントその人であるとも知らずに・・・。
一方、ニナことクレアもまた、カルエルとの出会いを喜んでいた。
互いに惹かれ合い、相手に自分と似たもの感じ取り、気の合う二人。
まだ相手の知るところとなっていない身分さえなければ、何もかもがうまくいきそうなのだが・・・。



というわけで、今回はカルエルとクレアが親密になっていく巻。
そういって過言ではないかも知れません。
その甲斐あって、あれだけ恨み言を言っていたカルエルもすっかりイスラでの暮らしを満喫している始末。
滑り出しは順調のようです。


そして何より、クレアにとっては何もかもが未知の世界であり、初体験。
カルエルやアリエルとの交流を通じてその他の人たちとも接する機会を多く得られ、明るく開けた未来に胸躍らせています。
しかしカルエルが未だ何も察しないのに対し、彼女は既に勘付いてしまった様子。
予感は徐々に確信に。
抱える不安と恐怖に、彼女は今後どう向き合っていくのか・・・。
と同時に、彼女がニナとなるに至るまでの暗い過去も描かれています。


また、空では早くも来たるべき事態が来てしまった模様。
ここでは次巻への布石としての前フリのみとなっていますが、前作からの読者にとっては「いよいよ来たか!」というべきキーワードも登場。
ふたつの世界がひとつの世界に。
今回が平穏無事な学園モノの様相を呈していただけに、波乱の展開が待ち受けていそうな次巻がとても気になります。


尚、今回は寮生の全員が一気に登場したため、新キャラの多い巻となっています。
寮生以外のクラスメイトの登場はなく、貴族組(ヴァン・ヴィール)からの登場人物も一人に留まってこそいますが、教官と寮長を含めるとそれでも11名。
さらにクレアの近親者として1名の総勢12名が登場。
これだけ一度に増えるとある程度は仕方ない側面もあるでしょうか。
ややそれぞれの個性付けが陳腐な観が否めない気もします。
(妙な口調や突拍子もない行動・癖などによるキャラ付け)
いまはあえて前に出し個性を知らしめる必要もない端役に過ぎないですから、物語の要に絡んでくる形で必要となるまでは名前を出す程度に留めておくのもひとつの方法だったのでは。
少なくとも日常の会話に混ぜ込み、どうでもいい科白を与えてまで早々とこの巻でいっぺんに全員のパーソナリティを固定化しておく必要はなかったと思います。
一応名前が出るだけに留まりまだ未知数な人物が寮生に一人居ますが、そういうキャラがもう何人か居た方が良かったかな。


ちなみにどうでもいいことですが、僕はソニア教官が好きです。
そしてこの種の作品で常の疑問となる「何故特定の人だけ全員からモテるのか現象」はこの作品でも顕在化してしまいました。
どう考えてもあの面子ならアリエルとクレアにだけ人気が集中するわけはないと思うのですが(笑)。
ストーリー展開やキャククターなどを含め、良くも悪くもその辺のライトノベル化してきたなぁ、という印象のある2巻でした。