ストーム・ブリング・ワールド 1

かつてSSで発売され人気を博し、後に様々な機種で移植や続編が出されたゲーム『カルドセプト』の世界を小説化した作品。
を大幅に加筆修正して新装版として改題し、出版されたというもの。
ゲームを知らなくても楽しめる内容になっている。
これを書いている本人もゲームは未経験。


というわけで、あのカルドセプト冲方さんが小説にしちゃったよ、という5〜6年前の作品の新装版です。
旧版は読んでいないのでこれが初めてですが、さすがの一言。
実に無駄がなく、実におもしろい。
ジャンル的にはよほどライトノベルであるMF文庫Jの方が良いのではないか、とも思われますが、この所のラノベに多いテンプレめいた設定や記号化した人物の個性、あどとさや衒いが一切なく、あえてダヴィンチから出てきているのも納得の出来。
(まあ、MFJの場合は値段やページ数・レイアウトなど制限が多いので、その関係からそちらでの刊行を避けたのだと考えられますが)


以下、大雑把に作品概要を。
MTGことマジック・ザ・ギャザリングを思わせるような魔法が生きる世界のファンタジー作品。
この世界には、火の玉を生み出したり竜巻を起したり、或いは怪物を呼び出したり自身の力を高めたり、そういったことのできる力が秘められた石版が散らばっています。
石版からその力を引き起こすことができる人たちが、セプターと呼ばれる魔法使いのような者。
いま、世界ではこの石版をすべて集め“何か”をせんとすべく、手段を問わずに各国を荒らし回る黒のセプターなる集団が台頭しています。
その一方でこれに対抗すべく動いている集団もあり、主人公の一人がこの一員である少年。
と同時に、現状を大きく変える運命の歯車となる可能性を秘めた一人の少女がおり、この子がもう一人の主人公。
そして、まだ己が運命を知らぬこの少女を守護すべく、派遣された少年と出会ったことで彼女は・・・。
また、少年も彼女との出会いによって・・・というお話。
更に、主人公の二人は辿ってきた道や性格、考え方すらもまるで違うのですが、だからこそ相手の姿に強く感化されるところがあるらしく〜といった外せない王道の流れも汲んでいます。


尚、旧版は2巻で立ち消えの形で終わってしまっているそうですが、新装版がどうなるかは今のところ不明。
しかしそれよりもまずは2巻が非常に待ち遠しいです。
1つのエピソードを1冊でまとめる形式ではなく、長い話を流れの途中でぶった切る形で1巻が構成されているので、先が気になって仕方ない。
同時にいくつもの仕事を抱えてる冲方さんなだけに、いくら加筆修正するだけとはいえ刊行ペースは早くなさそうですが・・・。