天乞−あまごい− 1

天乞 1 (電撃コミックス)

天乞 1 (電撃コミックス)

綺麗な歌声を持つ女の子、杏。
彼の兄、海老名天はその日、合唱コンクールに参加する妹の応援に行っていた。
しかし突如出現した硝子の空間に妹が囚われてしまう。
駆けつける天。
だが、その手が届くことはなく、意識を失う彼。
目が覚めればそこは身の丈の数倍はあるキノコが繁殖し、空にはふたつの月が輝く奇妙な世界。
そこで彼は、引き裂かれ散乱した少女達の死体を目の当たりにする。
しかも、彼女たちは声も姿も妹に瓜二つで──。

表紙に惹かれ、帯で興味をもち、公式HPの試し読みで購入を決めた一作。


というわけで、何となくの印象で買ってきた作品ですが、これがまた大当たりでした。
深まる謎に翻弄されつつ進行する物語が興味深く、話で読ませる作品ですね。
キャラクターの魅力を前面に押し出した作品も良いですが、ストーリーにグイグイ引き込まれていく作品はもっと好きです。
実に面白い。


進行は基本的に天からの視点で構成されています。
何もかもが見通せるいわゆる「神の視点」がなく、読者も天と共に順を追って置かれた状況など諸々のことを把握していく形式。
説明的な展開や科白などもあまりなく、その分だけ謎は多く残りますが、テンポ良く話が進むので好印象です。


作画に関しても申し分ありません。
吹き出しに頼らずとも心情が汲み取れるだけの表情の機微が表現されている。
これがストーリーのテンポと相まって、謎だらけなのに読みやすく分かりやすい作品を作り上げている感じ。


調べてみたところ初のオリジナル作品のようですが、作者はお一人ではなく三人ユニットでした。
道理で、総じてクオリティが高いのも納得。
また、装丁やロゴなどのデザインもすべて自前。
各人が得意とする分野を持ち寄っているユニットならではですね。
雑誌連載よりも単行本としてまとまることでひとつの作品として完成しているような印象です。
しかしそうする上で邪魔になるからなのか、あとがきやおまけページが一切ないのはちょっと寂しいかも。
ただ、いずれにしても質が高い作品なので、次巻もとても楽しみになりました。