人類は衰退しました 5

人類は衰退しました 5 (ガガガ文庫)

人類は衰退しました 5 (ガガガ文庫)

気がつけば一年ぶりとなる新刊。
されど毎巻ごとにきちんと幕が下りているからさほど気にならないのが本作の利点か。
今回はついに、「私」の学舎時代に遡る過去編を収録。
その他、古式ゆかしいゲームを懐かしむようなエピソードも収録の第5巻。


さて、5巻です。
冒頭の通り、今回の目玉は調停官となった“いま”の話ではなく、“むかし”の話。
人類の衰退が始まって久しいこの世界では、教育機関のあり方も現実の日本のそれとは大違い。
それに伴う弊害と現実の学校でも起こり得る集団生活の暗部をシニカルに織り交ぜつつ、「私」の入学から卒業までの10年近い歳月が描かれています。
基本コミカルなのに時折いやにシリアスになる『人類は衰退しました』らしく、この話は途中までが割と重いです。
後半に入ると話も軽くなるのですが、そうなるまでの「私」が外との関わりをシャットアウトし、ふさぎこむことで自己を守ろうとしている期間はなかなかにヘヴィ。
それにしても、巻き毛が病的すぎる・・・。


また、「私」は忘れてしまっていただけで、実はこの頃とそれより遥か以前の幼少の頃からすでに妖精さんと遭遇しており、一定の交流をもっていた事実も判明。
ただの回想ではなく、現在へとつながる要素も併せ持ったエピソードでした。


一方、もうひとつの方の話はすっかりいつものコミカル調。
一体何が原因でそうなったのか、突如「里」がゲーム風の世界になってしまい、家屋が沈没するという怪現象やインベーダーの襲来を受け始める。
事態を解決すべく、妖精さんをパーティーに加えた「私」は地下の迷宮へと潜るのだが──。
というお話。
ファミコン以前のふる〜いドット描写からPS3世代の超美麗グラフィックに至るまでの変化を遂げる世界の描写が愉快。
古き良きゲームに思い入れのある懐古主義者であるほど、ある種の共感めいたものを抱くかも知れない。


というわけで、相変わらず独特のセンスが楽しい5巻でした。
尚、今回は全体的に妖精さんの出番は少なめです。