ヴァンダル画廊街の奇跡 2
- 作者: 美奈川護,望月朔
- 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
- 発売日: 2010/05/10
- メディア: 文庫
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読了が大分遅くなってしまったのが少し残念。
さておき、今回は少し物語が大きな局面へ向けて動き始める様相を呈している。
思ったよりも早くに2巻の出てきた当作品。
この業界、もはやシリーズ化してなんぼの状態になってきているので、仕事が早いのは作家として生き残る上で何よりも大事かも知れない。
さて、今回の話ですが、短編形式の構成であることはこれまでと変わらず。
章の数は、序章・終章を除くと4つ。
ただ、その4つの顔ぶれは1巻とは異なる様子も見せている。
まず、1章・2章の前ふたつはこれまで通り。
ゲストの人生の一端を描き、その片隅にヴァンダルとしてのエナが顔を出すといった形式の物語。
相変わらず主人公とは思えないほどに影の役に徹している。
更に言えば、別段エナの行動が何かをもたらすわけでもない。
たとえば1章では、数百年間稼動を続けてきた街のシンボルたる時計塔が、「プロパガンダ撤廃例」の余波を受けて取り壊しとなるといった話なのだが、ヴァンダルが例の巨大複製画を出現させることで、その決定が覆ったり、絵を目撃した人々が反対運動に乗り出して・・・などといった劇的な展開はない。
絵を目撃したゲストの人物もこれといって何をするわけでもない。
そういった意味では相変わらず非常に地味な作品で、あまりウケが良くなさそうなのだが、個人的にはこの静かな雰囲気としみじみとなる作風が好きである。
細く長く続いてくれると良いのだが、昨今の潮流を鑑みるに恐らくそれは叶わず、次巻か4巻辺りで終わってしまいそうな気もする。
次に後半のふたつに関してだが、こちらが上述した1巻とは異なる要素となっている。
まず、どちらともにエナがヴァンダルとして巨大複製画を街に出現させることがない。
そうした調子でヴァンダルとしての活動がないため、3章ではよりゲストを中心とした物語としての色合いが濃くなっている。
エナの登場はほとんどあってもなくても差支えがないほどの添え物といった印象だ。
一方、4章は逆にゲストを描くいつもの物語がない。
その代わりとして、活動を再開させた兆しのあった“DEST”の二代目UMAとも言える存在が登場。
エナとの対面を果たし、メッセージを残していくといった展開が用意されている。
これまでのような感傷に浸るような物語とは一線を画しており、動きの激しい内容となっている。
今後はこの人物との接触や敵対が作品の中心軸となっていくのだろう、という新展開への転換点を思わせる。
個人的には、今まで通りの落ち着いた叙情的な物語をこの作品には期待したいのだが・・・。
というわけで、少し3巻以降の方向性に懸念の残る第2巻だった。
というか、次で最終巻という可能性もあるかなぁ。
受賞作にしてはあまり売れてないだろうし。
萌えとアニメ化しか売れない傾向が寂しくもある。