天乞−あまごい− 2

天乞 2 (電撃コミックス)

天乞 2 (電撃コミックス)

突如放り出された異世界で、兄は大切な家族──妹を探し出すことができるのか。
そして、彼の居なくなった現実世界では、一体何が起きたのか・・・。
ジブリ顔負けのファンタジーアドヴェンチャーを展開する期待の一作、待望の第2巻。


さて、2巻。
読者と同じ視点を持つのが主人公たる天(そら)ということになるだろう本作だが、飛ばされてきたばかりの異世界がゆえに右も左もわからない彼。
そのくせ容姿だけは伝承の──それも凶兆の象徴を彷彿とさせ、トラブルだけは招きやすいというからタチが悪い。


だが、それが良い。
急遽異世界に主人公が飛び、伝承云々などに基づき現地で特別扱いされる人物となった場合、大抵の作品は主人公が一人で何でもできるほど優秀な存在になりがち。
しかし本作はそれとは正反対に、むしろ初心者らしく非常に足手まとい。
元凶のくせに自分ではまだ何もできないに等しい。
そんな彼が、何故か先に(人によっては数年も前に)飛ばされていた──が故に既に異世界慣れしている──友人らの力を借りならが成長していくだろう展開が楽しみだ。


一方物語の進捗はと言うと、妹の現況など1巻の時点と比べて分かってきた事がいくつか用意されている。
やはり、この少しずつ謎が明らかになっていく過程が良い。
「何を」「どうすれば」妹共々無事に元の世界へ帰れるのかといった根本的なことは依然として一切不明ながらも目先のやるべきことだけはハッキリとしている。
まさに五里霧中の中を一歩一歩進んでいくといった塩梅だ。


加えて、靄がかかったように判然としない事といえば、第1話から通じて時々挿入されている 悪夢のような光景・過去の記憶 の意味するところ。
どこからが夢あるいは間違った記憶で、どこまでが現実または正しい記憶なのか。
この境界が曖昧なことで言い知れぬ不安をかきたてられるのがたまらないのである。


尚、電池残量との相談になるが、天達が所持している携帯が一定の条件下で稀に現実世界と通じることがある模様。
その結果として、あちらでものっぴきならぬ事態が起きていることを知り、天は「早く戻らなければ」という焦燥感を募らせることになってしまうのだが・・・。
天のこういった葛藤も今後の見所になりそうだ。


そういったわけで、「予測不能の展開」「カラーで見てみたいと思わせる幻想世界の風景」「魅力的な登場人物」などなど楽しめる要素の多い作品であるという印象は2巻でより深くなった。
物語はまだまだ序盤といったところなので、いかにマイペースに連載を継続できるかが鍵か?


余談ですが、個人的には旬華がお気に入り。