黄昏世界の絶対逃走 2
- 作者: 本岡冬成,ゆーげん
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2010/12/17
- メディア: 文庫
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まさかあの物語の続きが書かれることになろうとは、と発刊が驚かれた第2巻だが、その実態は舞台を同じくした別の人物によるアナザーストーリー。
続きではなく、シリーズとしてのナンバリングだ。
というわけで、カラスとメアリの物語ではなく同じ世界の違うところに生きる別人を主人公にした新しい物語が描かれた本作。
登場人物の境遇や年齢(前回より低年齢化)も変化し、物語としての趣きも結構な程度で1巻とは異なっている。
ひっそりとリンクする要素やネタなども仕込まれておらず、純粋に設定だけを共通したまったく別の物語と言って良い。
ゆえに、いきなり2巻から読んだ場合も「黄昏世界とはなんぞや」という点における理解が不足する点以外にはこれといって差し障りはない仕様となっている。
次に、ストーリーに関してであるが、今回は主役は二人+一人。
中でも物語の核をなす二人は、1巻のようなボーイミーツガールとは対照的に十数年の時を共に暮らしてきた兄妹───シズマとアオイとなっている。
そして、移動が主体であり舞台が移り変わっていった1巻とは大きく異なり、定住地を基盤にストーリーが展開される点も大きな違い。
また、今回は主役二人が既に互いを深く良く知る関係であることもあって、互いが互いに対する理解を深めていく過程を追うことで読者も主人公の人間像を把握していくことができた前回とは異なり、初めから完成しているものが提示されているようで、理解を深めていく過程がなく人間像が掴みにくいと同時に、やや感情移入しにくい。
この点と舞台が固定されている点の両方が相まって、今回は狭い世界で物語が完結してしまっている印象が強い。
そのほか、絶対逃走と銘打ってあるものの今回は、それなりに安定した定住生活から一転して逃走劇に至るまでを描く物語となっており、前回のような実際の逃走劇は描かれない。
そして一番の違いとしては、バッドエンドと思わせておきながらハッピーエンドであった1巻とは違い、今回は非常に心中複雑になること必至な結末を迎えることが挙げられる。
前回のラストがああであっただけに、それを知る人の方がかえって「今回も大丈夫だろう」という油断から意表を突かれるかも知れない。
一方で、形も趣きも違えど一種のラブロマンスとしての物語性は共通している。
どちらの物語が好みに合うかは人それぞれとなりそうだ。
ちなみに、個人的にはこの2巻は劣化版といった感想しか持てず、1巻は支持したい作品であったが、このクオリティが続くのならば3巻以降には期待がもてない。