テルミー 2 きみをおもうきもち

テルミー 2 きみをおもうきもち (スーパーダッシュ文庫)

テルミー 2 きみをおもうきもち (スーパーダッシュ文庫)

事故で亡くなった二十四人のクラスメイト。
その事故でただ一人生き残った少女。
彼女には、二十四人の遺志と記憶が宿された。
彼女は彼らの最期の願いを叶えるために、その身を賭す・・・。
胸がすくような感動の物語第二章、一年の歳月を経て、ここに。


一年待ってようやく続刊が出た。
あまりに音沙汰がないので、ライトノベルにありがちな「続きが書けずに結局1巻限りで自然消滅」という末路を辿るのかという懸念さえ抱いた次第である。

実際、1巻は続きを書くこともできるが、完結作品として終わらせることもできるものだった。

しかし、その内容たるや待った甲斐が大いにあるものだった。
一般的に、第一印象はそれが良い印象であった場合とかく美化されがちである。
そうであるが故に、2巻以降でそれを上回る印象を残すのは困難だ。
だが、本作は著者が苦心して作り上げ、一年空けてしまったことを詫びつつもそれだけの価値がある自信作に仕上がったと述べているだけあって、1巻を上回る出来になっていると言って良い。
1巻を読んだ人は必ず。1巻を様子見してスルーした人はいまこそ手に取るべきだ。


ちなみに、今回の内容は大雑把に言って次のふたつ。
一年越しの告白を前に事故で命を落としてしまった少年と、少年の想い人のお話。
誰よりも想いを共にし、映画を作る喜びを分かち合ってきた主演女優と脚本家という二人の部員を失った映研部の部長の再起を描くお話。
この他にあとひとつ、プロローグで一人の少年の願いが叶えられているが、実質的には上記二本で構成されている。
つまり、都合四人の願いが叶えられているが、物語として達成されたものは三件だけ。
それも冒頭のものを除けばわずか二件である。
こういってしまっては何だが、1巻にはそれを構成する物語は素晴らしくとも願いそのものには実に瑣末な用件も含まれていた。
今回はそれがなく、丸一冊を費やして二つの事案だけに注力されているのだ。
この濃密さが1巻にはない深みをもたらしていたように思える。
涙脆い人は、1巻以上にティッシュかハンカチの用意が必要だろう。


そしてこう思うのだ。
また一年待っても良い。三巻が読みたい、と。