天地明察 1

天地明察(1) (アフタヌーンKC)

天地明察(1) (アフタヌーンKC)

ライトノベル作家冲方丁が、一般文芸界にその名を知らしめた一作『天地明察』のコミカライズ。
日本の歴史を大きく変えた一大事業に携わることとなった男の生涯を描く物語。
「退屈でない勝負が望みか」
始まりの第1巻が、ここに。


さて、同名小説を漫画化した本作。
時は江戸時代。
碁打ちの名門家の一員として登城し、勤めを果たす日々に飽いていた主人公─二代目安井算哲───またの名を渋川春海は、碁もそこそこに趣味の算術や天文にうつつを抜かしていた。
そんな彼を咎める者も少なくはなかったが、お城碁が彼の魂に響くことはなかった。
だがある日、そんな彼の魂を打ち震わせる出来事が起きて・・・。
というような始まりをする作品である。


作画においては、漫画化に辺り原作者より「自由にやって下さい」とのお達しが下り、主に春海の作画に大きな影響を及ぼした模様。
具体的には、実に表情豊かに感情を表現する人物となっている。
これにより漫画としての魅力は高まったが、その一方で原作とは違った趣を宿すことになったのも事実である。
ひたすらに厳格に原作をなぞるか、それとも漫画は漫画ならではの味をもたせるか。
読者がどちらを是とするかによって多少評価が異なったものとなりそうだ。
ただ、それはあくまでも原作の読者であればの話であり、そうでないものにとってはやはり現状の表現豊かなあり方がベストなのかも知れない。


その他では、特徴的な作画も相まって個人的にはえんと道策のビジュアルがやや残念な印象。
一方で、老中酒井氏は納得のビジュアル化。
そして肝心の春海であるが、こちらは時によりけりといったところか。
これが良い!と思わせる場面もあれば、やはりこれは良くなかったのではないかと思わせる場面もあるため彼の容姿をこのような設定にしたのが良かったのか悪かったのか・・・。
それは今後次第となるだろうか。


尚、物語はまだ序の序といったところであり、静かな湖面に一石が投じられた程度。
そこから生じた小さな波紋がやがて大きなうねりを生むことになるのだが、それはまだ先の話。
現段階では、原作を知らずに入るにはこの作品の魅力に引き込むための力強さにおいて、やや物足りないかも知れない。
故に、どうせ読むのならば次巻が出るのを待ち、それから一気に読むのもアリか。