キノの旅 15
- 作者: 時雨沢恵一,黒星紅白
- 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
- 発売日: 2011/10/08
- メディア: 文庫
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絶対遵守の法ではないのに今年も律儀に出てきた最新刊。
鮮烈な印象を残すエピソードは連発できずともマンネリもしてはいない定番シリーズ、第15巻。
さて、特に今更説明のいる作品でもないので、例によって内訳について触れる。
今回はプロ/エピローグとカラー部分を除いた純粋な本編は全6本。
特に長い話はなく、どれも中編以下の短めの物語となっているが、今回は「珍しい」と思えるケースが多め。
- 第一話:ケダモノの国
師匠とお弟子さんのお話。
来訪した国で猛威を振るっていたある動物を退治することになったのだが・・・。
- 第二話:マニアの国
10頁程度のショートエピソード。
これと言って特筆するような点はない。
強いて言えば、時系列としてはかなり昔のことであることが覗える。
(2巻で使われたナイフ型パースエイダーをここで入手しているため)
キノとエルメスが登場。
- 第三話:過去のある国
二話ほどではないが、比較的短め。
キノとエルメスが登場。
国家の歴史とは、その国の者たちの大半がそうだと信じていれば真実として成立してしまうという側面を描いた著者らしいシニカルなお話。
本当の織田信長や坂本竜馬を知る人はもうどこにも居ないのと同義である。
- 第四話:フォトの日々
タイトルに「国」とない時点で察せられるかと思うが、厳密には国の話ではなくとある個人のお話。
キノや師匠、シズ以外の名前のある人物を中心に描かれる珍しいエピソード。
物語の内容的に、再登場する可能性は限りなく低そうだが・・・?
尚、キノらの出番は一切ない。
- 第五話:ジャーナリストの国
こちらも二話くらいの短編。
珍しくキノが感情を元にして半ば私怨とも言える形で行動を起こすレアケースが描かれる。
因果応報、自業自得。
とはいえ、きちんと天罰が下ったかどうかまでは描かれていないので、キノの自己満足で終わってしまった可能性もゼロではない。
- 第六話:犯人のいる国
今回でもっとも長いエピソードだが、それでも100頁に満たない。
こちらも珍しく、キノが自衛や依頼以外で戦闘行動を取るお話となる。
まあ、半分自衛・半分依頼といった側面もなくはないが・・・。
以上である。
今回は作者特異のシニックなエピソードはひとつだけ。
読後に痛快感のあるエピソードも「これだ!」というものに欠ける。
犯人のいる国がああいったオチでなければ痛快だったのが、あのオチが時雨沢さんらしいとも言えるのがまた何とも・・・。
その点では全体的に物足りない気もしたが、上述したように珍しい話が多かったので、そちらが印象的だ。
尚、今回はシズ一行の出番はイラストノベルとプロ/エピローグのみに留まっている。