獣の奏者 5

獣の奏者(5) (シリウスKC)

獣の奏者(5) (シリウスKC)

他の者が持ち得ぬ知識と発想によって衰弱した王獣の子供を救うことに成功したエリン。
以来、その世話を一手に担うこととなった彼女は、世話を続けるうちに王獣の生態に秘められた驚きの事実に気付いてしまう。
しかしその事実は、王朝が意図的に隠匿しようとしていた可能性のあるものであった。
知らず知らずエリンは、国政をも揺るがしかねない存在になろうとしているのだった・・・。


さて、先の一件を経てリランの専属世話係となることができたエリン。
その後四年もの歳月をリランと共に過ごし、ついには成獣に至るまでとなった。
だがしかし、笛による支配もなしに一介の人間が王獣と接し、親密な関係に至った事実はそれだけで前代未聞の事態であった。
そして、エリンだけが気付き、導きだした王獣の生態に関するある結論は、それ以上に重大な事実を内包していて・・・というのが今回のお話。


この展開は途中から第六章へと移行しているのだが、如何せん波乱の前兆が見え隠れするものであり、胸騒ぎを誘う。
母子のように接するエリンとリランの姿だけを見れば、とても温かく安らかな光景であるだけに、この対比がもたらす不安は名状し難いほどだ。


また、この5巻の終わりにはエリンの年齢もいよいよ十八にまで達した。
もはやただ周囲から守られるだけの子供ではなく、自身の判断とそれに伴う責任が直接問われる時期に差しかかったと言えるだろう。
作者のあとがきにも今後は怒涛の展開になると記されているだけに、これまでのように単純に楽しいだけではない物語がこの先には待ち構えていそうである。
それだけに、6巻が待ち遠しくもあり恐ろしくもある。