STEINS;GATE−シュタインズ・ゲート−円環連鎖のウロボロス 1

X-BOX360という微妙なハードで発売されながらも話題を呼んだ通称「神ゲー」ことSTEINS;GATEAVG)の公式ノベライズ。
部分的な改変を除き、基本的には著者なりの文章で原作ゲームをそのまま小説にしているらしい。
らしいというのは、ゲームをやっていないので原作はまったくの未知だからである。


ようやく読み終えた。
いや、読み始めてからはのめり込むようにして読んでいたため頁数の割にはあっというまだったのだが、その厚さと内容ゆえに最初の一歩を踏み出すのが遅れた。
なかなかにヘヴィな一作である。
しかし非常に面白い。もっと早く手をつけておくべきだった。買ったのは発売直後だったのだから。くそぅ。


以下、概要。
自称マッドサイエンティストの岡部倫太郎・・・もとい鳳凰院凶真は、ある出来事を契機に、自身の趣味的発明品のひとつである改造電子レンジに過去へとメールを送る機能があるのではないかと疑う。
これが真実ならば世紀の大発明だ。
鼻息も荒く、その解明へと乗り出す凶真。
ほどなくそれは真実であることが判明する。
そして彼は、頼もしき友人と天才科学者(の卵)を仲間に、この発明品が引き起こす現象をより確かなものへとすべく研究を進め、ついにはメールのみならず「現在の記憶」を過去の自分へと送る装置の発明に成功した。
それは、まぎれもなく過去を改変する力を有するタイムマシンと呼ぶべきもの。
と同時に、それはあまりにも危険な代物で・・・。


といったような塩梅。
これは世紀の発明だ!という熱狂と共に進行する研究へ引き込まれるように読み手の高揚感も高まっていく物語は実に楽しい。
だが、ある時から言い知れぬ不穏な予感がし始める。
そして後半のある点を境にそれは確信に変わる。
しかしこれは読者という特殊な視点だからこその確信。
当事者たる彼らは気付かない。
いや、あるいはうっすらとした予感はあったのかも知れない。
けれども世紀の発明という“お祭り”を前にそんな予感が役に立つことはなかった。
結果、装置は完成した。
この時になってようやく、これは大変なことをしたのではないかという不安を募らせる彼ら。
だが、装置は既に完成してしまった。
いますぐに破壊したところで、装置を完成させたという事実は消えはしない。
もっとも、外部に一切この事実が知られていなければ話は別だが、そのような虫の良い話があるはずはない。
気付いた時には後の祭りだった・・・。
この一連の過程がどうにもたまらない。
「ああやばい、これはまずい。まずい・・・。」と解っていてもどうにもできない読み手のもどかしさが最高だ。
ゲームのノベライズというと大抵はアレで残念なイメージがありがちだが、これはまったくもってそんなものとは無縁の出来だった。


ただ、その辺の文庫なら2冊分に相当する550頁を超える質量と本格的な科学の会話が行き交う文章は少し取っ付きにくい観は否めない。
読み始めてしまえば一気ではあると思うのだが・・・。
極端な話、斜め読み・飛ばし読みは絶対にしないというポリシーがあるのでもなければ、科学な会話の部分は斜め読みで飛ばしてしまうのもアリかも知れない。
僕はこのポリシーのせいで苦労した。
全部に目を通し、意味を咀嚼するには骨が折れる作品であることは間違いない。
それだけ読み応えもあるけれど。


尚、2巻がどの程度の厚さになるかは不明であるものの実質上下巻と言える全2巻で本作は完結するとのこと。
最終巻となる第2巻は冬頃の発売が予定されている。