狼と香辛料Ⅱ 第四幕「狼と浅知恵の末路」


些細な誤解からホロとの間に亀裂を生んでしまった事を悔やむロレンス。
しかし悔いてばかりいても事態は何も良くならない。
折りしもホロとアマーティそれぞれから届いた二通の手紙を読んだ事で奮起する。
策を巡らせ逆転の手を練り、更には口八丁でアマーティを焚きつけて勝負に乗ってこさせるのだった・・・。

ロレンス、テラ策士。
アマーティ、所詮はガキ。安い挑発にまんまと・・・という第4話。


さて、4話です。
「黄鉄鉱が云々、信用売りがどうこう」
この辺の諸事情や状況が若干分かり難いかも知れない今回の話。
一応原作を知らずとも理解できる作りにはなっていましたが、分かりやすく例えると黄鉄鉱はかつてのたまごっちです。
(ここから大分長いです。
 興味のない人、既に理解できている人はバンバン飛ばしてください。
 目印としてラインを引いてあります。)
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いまから10年ちょっと前のことですが、売り出せば即売り切れたたまごっち。
あちこちで定価以上の高価買い取りが行われており、転売益を目的に買いが殺到しました。
いまの黄鉄鉱はこれと同じ状況。
アマーティはこれで儲けようとしています。


しかし所詮一過性の熱狂。
流行りものはブームが去ると途端に暴落します。
たまごっちも売り時を間違えたら二束三文にしかならなかったように、黄鉄鉱もいつかはただの石ころになります。
ロレンスは逆にこの値下がりの可能性に賭けて勝負に出た、という構図です。


ついでに信用売買についても解説まがいなことを。

  • 今日の相場 黄鉄鉱 1個200円

ロレンスはアマーティに「明日500個渡す」約束をして、「いま10万円くれ」と言います。
アマーティは10万円払って「明日500個もらう」契約を結びました。

  • ケースA:明日の相場 黄鉄鉱 1個400円

アマーティは契約通り黄鉄鉱をもらい、これを売って20万円獲得。10万円儲かります。
ロレンスの負けです。

  • ケースB:明日の相場 黄鉄鉱 1個100円

アマーティは元々10万で手に入れた黄鉄鉱が5万円でしか売れません。5万円損です。
ロレンスの勝ちです。


とまあこんなところ。
ちなみに現状では明日黄鉄鉱が値下がりする見込みはほぼゼロ。
何もせず普通に明日を迎えればケースAとなり確実に負ける不利な状況です。
しかしロレンスは先にもらった10万円と既に持っている財産を元に、明日の黄鉄鉱相場を滅茶苦茶にして暴落させるつもり、ケースB狙いというわけです。


また、どちらのケースになるとしてもロレンスは二通りの行動を取ることが出来ます。
前提として、最終的に1個100円or400円になるものの朝に市場が開いた瞬間からいきなり100円or400円になっているわけではなく、昨日からの流れを引き継いで200円から始まり、やがて100円or400円になるという事を抑えておいて下さい。

  • パターン1:アマーティに渡すはずの黄鉄鉱を売る

200円のうちに10万円で売ります。
100円になってから5万円で500個買い、アマーティに渡せば5万円儲かります。
但し、万一400円になってしまった場合は10万円で売ったものを20万円で買い直すハメになります。危険です。

  • パターン2:売らずに取っておく。

安全策です。100円になろうが400円になろうがロレンスが損をすることは絶対にありません。
但し、需給の関係を考えればロレンスの売りがない分だけ黄鉄鉱は400円になる可能性が高くなります。
危険はないがアマーティが勝つ可能性も上昇。


損得抜きにまずアマーティに勝ってホロを守るには危険を冒してパターン1に打って出るしかないわけですが、さて、ロレンスの選択は?
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以上です。
はたしてこの説明で分かりやすくなったのか疑問ではありますが、次の話へ。


今週はロレンスとマルクのやり取りにこそ見所があったのではないかと思います。
残念ながら尺や表現の都合で「頼りにしていたマルクに申し出を断られた」時のロレンスの怒りや焦燥などころころ変わる内心の変化や動揺などまでは再現できていませんでしたが、そうでなくとも話としては面白い箇所。
こういった状況では当事者よりも部外者の方が物事がよく見えているといった事があるように、ロレンスは気付いていない何かにマルクは気づいている様子も見られました。
まあ、何に気付いていたのかはこの先の展開のネタバレになりますので明かせませんが、一にも二にも、ロレンスは良い友人を持ったものだなぁ、という話ですね。
ヒゲ、ナイスガイ。


尚、ロレンスが黄鉄鉱がいくら下がろうが構わない、と言った後マルクが「くそ、信用買いか」という場面がありましたが、原作では「信用売り」となっています。
一応アニメのような発言が出ても整合性が取れないことはないですが、信用売りで売り先を確保しているのか!という意味での発言としては若干不適切かな。


というわけで4話でした。
来週はいよいよ佳境、一番の盛り上がりどころかも知れません。
ちなみに原作の第四幕は1冊のうち一番ボリュームが多い箇所になるため、アニメは今回の1話分では収まりきっていません。
基本原則から外れたため、次回の5話も原作四幕の話になります。